洋画研究領域
今日ほど、真に芸術が求められている時代はありません。 諸科学の進歩は人間の生活に飛躍的な便宜性をもたらしてくれましたが、その反面、紛争や環境破壊といった負の文明も引き受けてしまいました。 各個人に広がる、「心の闇」の不安にも計り知れないものがあります。本研究領域では、このような現代社会の中にあって、絵を描く喜び、ものをつくる楽しさを実感することで社会に「希望」のメッセージを発信したいと考えています。絵画は精神の設計図でもありプログラムでもあります。 今日を生きる精神の在り方、態度といった芸術の本質的問題を多くのメディアの総合として提示できるのが絵画です。本研究領域では国際的視野に立って、現代アートの表現はどうあるべきか、大学で身につけた技術や知識の上に、さらに多様な手法を追求し、各自のテーマを深めます。 自然、文化、物質、その他関心の深いテーマを視座に置き、柔軟な発想で展開していくには材料や技法についても固定的な考えに縛られずにより創意ある表現に向けて大胆な実験を繰り返すことが不可欠です。そのような高度な訓練によって大学で体験した表現の質とスケールをさらに魅力あるものに高めていきます。
本研究領域では、自由闊達なゼミと創作研究に没頭できる制作現場、研究環境を整え、世界に通用する個性とオリジナリティのある新しい表現力を持った美術作家のみならず、研究者、教育者の育成をも目指します。
日本画研究領域
日本画の伝統を奥に蔵した新しい日本画を目指す中で、個々の真の個性を磨き、創造の本質に迫ります。 大学で学んだ専門教育を土台に、各自の感性、表現力をさらに高度にし、日本画の独自性について考察を進め、将来にわたる創作活動の基本を確かなものとします。 「日本画表現技法演習」では、古典作品を模写研究することにより、様々な専門的技法、知識を習得し、作品への洞察力を養い、創造の普遍性を追求します。 また、「日本画材料・技法演習」では、優れた特質を持つ日本画の材料を科学的に見つめ、技法を実験研究し、日本画の新しい展開に繋げます。 その他の理論研究とともに、自己を高め、充実した人間となるため、創作研究活動を行い、修了作品に結実させます。
版画研究領域
本研究領域における研究は基本的に大学における4 版種の研究に立脚し、銅版画と石版画を軸として孔版画・木版画さらに版表現に類する表現も含め各自の主体性に基づき継続的に専門性を追求します。
版画は印刷媒体として派生し、その時代の社会に敏感に反応し表現や技術を発展させました。今日では絵画の一領域として、現代の多様化するメディアも視野に入れ、版表現としての造形思考を模索する事が重要となっています。 そのために、時代の要求として生まれた表現がいかに普遍的表現に変わったか、史学的、科学的な要素も含めた検証を試みながら変遷をたどるとともに、 具体的検証法として、特定の作家を題材にイメージの解明、創作コンセプト、素材と技術との相互の影響を分析研究し、今日のメディアをも考慮しながら現代の美術において独自な創作の方法論を確立します。 版画表現における技術偏重が批判され, 個人の創造性が期待されて久しいものの、一方、見方を変えるとその技術、素材などの研究、教育も不十分であり個人的研鑽と模索に委ねられていることも事実です。 版画表現技術も創作研究の新たな視点として一貫した教育システムのうちに継承発展させる必要があります。 実際的な技法と材料の研究を目的として、既存の材料、技法のみにこだわらず必要となる材料を各自で考案・開発する基礎力をつける事を目指します。
工芸研究領域
工芸研究領域では、日本のものづくりの伝統に根ざしたこれからの工芸の可能性を見出し、独自の表現を発見し、新しい創作研究を目指します。
大学院では多角的な視点を持ち、多様化する現代に対応した造形表現を追究し、自らの独創性を深める創作につなげることが出来る作家を育成していきます。
創作テーマを確立し、その実現のために学部で学んだ技術を基に更なる技術の習得と素材の探求を行い、染、織、刺繍、陶、ガラスの 5 領域の専門性を高めます。
創作研究を追究していくことは現代社会の様々な問題と向き合うことにも繋がります。今後は持続可能な素材や技術の研究も必要な課題となるでしょう。時代の変化を捉えながら、社会との関わりの中でオリジナリティある作品を創作し、発信できる人材を育てます。
立体芸術研究領域
表現手段も多様化しジャンルが明確でない現代において、本研究領域では時代に左右される事なく人間としての根底にある美的感覚に響く自由な創作活動を中心に研究し、自己の専門性をより深め確立することを目指します。
また素材という領域を越え、多種多様な素材を自由に組み合わせ応用し、従来の彫刻という枠に止まらず自己表現の為、感性を信じ、考え方や技法を墨守することなく、素材の可能性を常に考察し、自己のイメージを大切にする創作研究でありたいと考えます。
創作する事は、自己のイメージを具現化する一方的な行為と思われますが、作品を通じて自己と他人の接点、制作の必要性と社会との関わり等を考え、自己を高める事も必要です。創作内容の質を向上させる為に、他ジャンルの芸術作品を広く鑑賞理解することは重要な要素の一つです。