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このたび本学卒業生で(株)資生堂研究員の島倉瞳さんと本学芸術文化専攻の坂田勝亮教授(色彩学)が共同で行った研究により、顔の肌の色を判断する際の基準が明らかにされました。

これは空の色や木々の葉の色といった一般的な色知覚に比べて、顔の肌の色知覚が鋭敏である理由を解明したものです。私たちは顔色がわずかに赤いだけでも酔っているのでは?と思ったり、青いと具合が悪いのでは?と心配になったりします。このような微細な色の判断ができるためには何らかの判断基準が存在すると考えられ、何に基づいて判断しているのかを明らかにするための実験を行いました。

実験ではさまざまな顔色の画像を見せて何色がもっとも強く感じるかを報告してもらい、顔色が赤すぎると感じる境界、黄色すぎると感じる境界、白すぎると感じる境界をそれぞれ求め、これらの境界の中心を参加者ごとの判断の基準点としました。そしてこの点は、自身の肌の色でも記憶している肌の色でも画材で定義された肌色でもなく、自身が属している年齢や人種の肌の色の平均値であることがわかりました。このことを確かめるため、日本だけでなく肌の色域が異なる英国の白人にも同様の実験を行い、やはり周囲の人の肌の色の平均値にもっとも近い色を基準に判断していることを確認しました。

このことから、私たち人間は周囲にいる同世代、同人種の顔の肌の色を無意識のうちに記憶しており、これらの平均値を判断の基準としていることがわかりました。またこの判断基準は顔として認識される場合にだけ生じることや、骨格にかかわらず自己の属している人種の平均値を用いていることもわかりました。この研究成果は、世界的に有名な英国の学術誌Vision Researchに掲載されました。