世界的人気キャラクター「ピンクパンサー」が60周年を迎えるあたり、世界各国でポップアップイベント「Celebrate 60 Years of the Pink Panther」(株式会社ギーク ピクチュアズ クリエイティブユニットGEEK WONDERS主催)が開催されています。日本では、森本晃司氏ら計7名の世代別アーティストコラボレーションを実施しており、今回本学に森本晃司氏をお招きし、在学生がインタビューを行いました。
森本晃司氏は、日本のアニメーション監督を務める一方、ビジュアル・クリエイター、アートディレクターとその活躍は多岐に亘ります。
メディア表現領域で学び、卒業制作で短編アニメーションを制作した4年生2人が、今回森本氏が手掛けたピンクパンサーのパラパラ漫画について、そしてアニメーターの活動について話を聞きました。
ピンクパンサーとのコラボレーションについて
Q.ピンクパンサーにどのような印象を持たれていますか?
ディズニーとは違う流れで、日本のテレビアニメーションに影響したcartoon (カートゥーン)ですが、その一環としてピンクパンサーがあって、「リアル」というよりも「デフォルメの効いたキャラクター」だったので作風がとても印象に残っています。
Q.国内のアニメーションと比べ、動きの表現にはどんな違いがあるとお考えですか?
逆に日本のテレビアニメーションがカートゥーンからの派生で、影響されていると思います。ピンクパンサーよりもっと前のトゥイーティー、テックス・アヴェリー系は、ディズニーが正攻法だとしたら全く違う方向の、やんちゃでちょっと悪い方という作品。日本のアニメーションが少ない枚数を使って、いかに表現をするかというところでは、ディズニーよりも影響されているんじゃないかなと思います。
Q.遊び心がたくさんありますよね
ミッキーマウスも初期は結構面白いことをやっていたけれど、途中からどんどんメインになってしまったがために正攻法でお利口さんになったというか。でもそれがあるからその反対として、めちゃくちゃやってもいいでしょう、みたいな感じがあります。そういう意味ではディズニーっていうのは凄い。大黒柱がない限りそういう発生はしない。いろんな表現につながっているし、カートゥーンっぽい動きの礎になっている気がしていて、ピンクパンサーもその流れの中で登場したと思うんです。
Q.森本さんの画風はリアリティな作風が印象的だと感じています
もともとデフォルメが好きだったんです。でもたまたま仕事の作品、例えば魔女の宅急便とかは、デフォルメができないんですよ。作品によって方向性があるので。純粋に動きを楽しみたいなっていう部分ではカートゥーンの方が面白いと感じました。
Q.今回ピンクパンサーにポッケを描いた理由は何ですか?
普通に歩くよりも「なんだお前」っていうちょっとこう、生意気な感じがいいなと思いました。でも腰だと手が出るし、もう少し入っていた方がいいかなと思って、じゃあポケットを付けちゃえと(笑) 特にこのキャラクターだったら許されるかなと思いました。
アニメーターの活動について
Q.作品を作る際アイデアの元、吸収している場所などはありますか
アイデアは普段歩いている街並みとか、人の動き、リアクションとか。場所はどこでもです。ここでこういうリアクションするんだとか、ここでこういう動きをするんだとか。街並みは綺麗な建物よりもなんか生活感がある風景が好きで、そういう意味ではアジア圏は好きです。特にタイとかベトナムとか。ヨーロッパに行くと生活感が出ないんですよ。
Q.エクストラのMVを見ました、それも路地裏っぽいですよね。
あれは吉祥寺にあるあのハーモニカ横丁です。昔のバラックの感じが残っていて、小汚いという言い方も変だけど、なんかこう生活感のあるホッとする場所です。自分が住んでいる場所でもあるため、頭の中で見てきたその寄せ集めて、実際に無いデザインでもこれがあったら面白いかなとくっつけて自由に作り上げました。
Q.制作の中で大切にしている、欠かせないことはありますか
描く時にその世界に入って、とりあえず見渡してみて、そこにいる感じを出したいなと思っています。知らない変な物を設定に描くことはいいけれど、そこに描くのであれば、なんでこれがあるのか、そこにちゃんと意味がないといけない。だから一個一個描くときはそれを考えています。変な設定があって勝手にストーリーが進んでいくと、お客さんが置いていかれる。置いてきぼりにしないようにしたいとは思っていますね。
Q.制作で行き詰まってしまった時、心掛けていることはありますか
逃げます(笑) まず置いて飲みに行きます。一旦やめて客観的に誰かのものをチェックするように、「なんだ、これは?」と「俺だったらこうするな」と。自分で自分を自分で突っ込むことが必要なのかなと思います。多少寝かした方が後で見たら「あの時に出さなくてよかった」って思うことも多々あるんです。
Q.アニメーターになるために、今からした方がいいことはありますか
例えば、学校への道のりを切り取ってみるだけでも、あの駅からこっちに通う、その路線だっていろいろあって、5分早起きしてくれば、別のルートで来ることもできる。そこに行くだけのために歩くのではなく、普段の眺めが自分の中に蓄積されていくんです。試験では、朝の5時・6時・7時をかき分けるとか、常にどういうふうにあの観察しているかっていうことも問われます。
Q.特殊な試験ですね
でも、アニメーターになることはスタート地点に立っただけ。全国から凄い人たちが来ているから、そこで自分に足りないことがわかるんです。一方、今は個人で表現する、ユーチューバーとかSNSとか、いろんな発表ができるから、会社に入るだけが道じゃないとも思っています。もし自分もこういう時代だったら会社に入らないでやったかもしれないし、個人で作品作ったかもしれない。でも最初からフリーなるのと一回その会社に入ってからフリーになるのとではまた違う次のステージが開けると思うし。いろんなパターンあるから何が正しいかはわかりません。
当日は、アニメーションを勉強している3年生が聴講し、インタビューや個別の質問から表現の視野を広げました。
森本晃司様、この度は貴重なお話を誠にありがとうございました。
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