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大学院に進学して作家を目指すようになったきっかけを教えてください。

女子美の在学中は、就職かそれとも絵を続けるかで悩んでいて、その結果大学院への進学を選択しました。卒業を前にどうしても個展をやりたいと決意したことも1つの節目だったと思います。必死でアルバイトをしてお金を貯めて、銀座のOギャラリーというところで生まれて初めての個展を開いたのです。それで自分の中で満足することができて、次に進めたように思います。大学院時代はコンクールに挑戦したり、グループ展に参加するなど積極的に活動して、だんだんと作家になりたいという思いを強くしていきました。

国内のみならず韓国や台湾など海外でも活躍されていますが、どんな日々を送っているのですか?

作家というと人には華やかそうに思われるのですが、それは個展が開催されている期間だけのことです。大体は引きこもった孤独な作業で、自分の中での闘いです。学生時代はアトリエに行けば仲間と会えましたが、卒業すると自分の作品に関して人と話をする機会もなくなりさみしいですね。経済的にも厳しく、切り詰めて生活しています。でもそういうことを考えすぎたら作家にはなれないと思います。どこか楽観的になれたほうがいいですね。私の場合はやりたいことをやって生きることを選んだのだから、と思っています。

My position-comings and goings-
『My position-comings and goings-』(2005年)とうさぎのオブジェ
樹海
『樹海』(2009年)

呉さんにとって、アーティストという職業はどういったものなのでしょうか。

私は自分の作品を通じて、自分と他者の関わりを表現したいと思っています。社会の中での自分の居場所を表現したいという思いもありました。油絵、立体、インスタレーション、映像と、さまざまな手法を用いていますが、自分の中の自由さのためにやっているのだと思います。作家活動や表現する仕事は生きていることの充実感につながると思います。私にとって展覧会は、作品をつくりました、展示しました、で終わるのではなく、コミュニケーションの手段だと考えています。展覧会に来てくれた人と話して、次の作品につながるような何かを見つけたいのです。アーティストは“考える”ことを多くする仕事です。世の中の物事の正否ではなく、どう考えるかを伝えることが作家の仕事だと思います。私はこういう考え方をしています、とちょっと恥ずかしいけれど作品を通じて伝えることが自分の仕事だと思っているのです。