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現在のお仕事に就いたきっかけは何ですか?

短大を卒業後、芸術学部芸術学科に編入し、そのまま大学院に進学して美術史の勉強をしてきました。大学院生の時に、ブリヂストン美術館と国立西洋美術館の教育普及室インターンを経験したことが、この仕事と出会うきっかけとなりました。子どもたちと接した時の反応に驚いたことが、学芸員ではなく美術館教育の専門家になることをめざした理由です。

具体的にはどのような反応だったのでしょう?

インターン時代ギャラリートークをやらせていただく機会がありました。先生に連れられてきて最初はつまらなそうにしていた生徒たちが、話をしているうちに急に目が輝いてきたのです。彼らの変化を見た時、見ることの楽しさを伝える話し手として子どもたちとずっと関わり続けたいと思いました。時々子どもたちが感想文を書いて送ってきてくれます。また美術館に行きたいとか、難しいと思っていたけど興味を持ちました、という言葉をもらうととても嬉しいですね。彼らからその気持ちを引き出せたら十分だと思っています。最近は、美術を教えることからはいったん距離をおいて、子どもたちと同じ目線に立ち、一緒に見ることを大切にしています。最初に知識や情報を与えるのではなく、まずは見ることの楽しさを伝えたいと思っています。

お仕事の内容を教えてください。

仕事の内容は大きく3つあります。1つは小学校、中学校、高校などの学校団体の受け入れ。次にボランティアの窓口としての役割があります。東京国立近代美術館では36名のボランティアの方々がガイドスタッフとして活動し、彼らの募集やスケジュールの調整などを行っています。もう1つがガイドブックの制作です。作品をじっくり見るきっかけとなる、子ども用鑑賞ガイドの作成も担当しています。美術史の中には、個々の作品について伝えたいことがたくさんありますが、その中から子どもたちに何を伝えたいのか、投げかけの言葉はどうするかなど、工夫しなければいけないこともたくさんあります。ガイドを作るために、作品について調べておくこともとても大切です。

常設展と企画展用の子ども用鑑賞ガイド
常設展と企画展用の子ども用鑑賞ガイド

将来どのようなことをやっていきたいですか?

自分の中では常に、人とモノ(作品)をつなげたいと思っています。とにかく美術館に来てもらいたい。子どもが美術館っておもしろいとか、楽しかったと思ってくれれば、成長してからもずっと “見ることを楽しむ大人”になってくれると思います。彼らとのつなぎ手になるためには日々勉強です。ボランティアの方とのコミュニケーションの中で教えてもらうこともたくさんあります。一緒に仕事をしていて感じるのは“自分らしさ”が大切だということ。私の“自分らしさ”って何だろうといつも考えます。そういうものが自然に出てくるといいなと思っています。

取材日 2009年9月時点での情報です。