大学院美術研究科
博士前期課程 芸術文化専攻(2年制)

あらゆる側面から色彩研究を行う「色彩学」。美術作品や作家について歴史的な解釈を行う「美術史」。そして「芸術表象」「美術教育」。芸術文化先行はこれら4つの領域で構成されています。
 

色彩学研究領域

人間は「視覚的動物」であるといわれるくらい、外界の情報を「見る」ことによって採り入れています。 このため美術、娯楽、学問、生活など多くの場面において「見る」という行為は人間にとって非常に重要な役割を果たします。「見る」ことによって形や奥行き、動きなどの情報を得ることができますが、人間の視覚メカニズムは色を見るためにできており、色の知覚から形や奥行きを知るようになっています。つまり色彩は人間の生活・文化活動にとって第一義的に重要な要素であり、芸術、癒し、娯楽、生活などを考える場合に非常に重要な役割を果たします。

そこで色彩について学問しようと考えるとき、色彩のもつ2つの側面に注目する必要があります。まずひとつは、色は人間の内部に生じる心理的現象であるという点です。色は目に入った光から我々の脳が創り出す感覚であり、個人的な心理経験です。このため知覚、記憶、言語、感情、文化などさまざまな人間の心理活動に影響を持ちます。そこで色彩の現象的側面を研究しようとするには、心の働きを知るための心理学的手法を学ぶ必要があります。人間の心の中に生じる各種の色彩現象を客観的に把握するための心理学的原理、調査・実験手法、データ処理、そして研究姿勢などを中心に学ぶ必要があるのです。もうひとつは色を生じさせるための原理です。色という感覚が我々の心理過程に生じるためには、その原因となる物理的存在が必要となります。作品をつくるとはまさにこの要因を作ることであり、どのようにすればどのような色が生じるのかを知ることが重要です。色の原因は主に我々の目に入る光であり、照明デザインならずとも創作するものにとっては見る者の目にどのような光が入りどのように見えるのかを知ることが重要です。

本研究領域ではこれらの色彩の心理学的側面と物理・光学的側面の両面から研究を行い、大学で学んできた色彩学の知識や技術をさらに発展・展開させていきます。 そしてそのうえで各自のテーマをより明確に解明していくことができるよう、より詳細な分野にわたり指導を行います。

美術史研究領域

本研究領域には、西洋美術史、日本・東洋美術史の研究分野があります。美術史研究は、美術作品が制作された当時の歴史的文脈を明らかにするとともに、人間の営みとしての美術の役割、その今日的な意義を検証するものです。

長年にわたって構築されてきた人文科学・社会科学の方法論を踏まえることはもとより、近年の隣接領域のさまざまな研究方法や成果を柔軟に取り入れながら、美術史を構成する基本的な問題としての時代様式や作品の分析、作家論、受容史などにアプローチします。

本研究領域の研究指導科目である「美術史研究」や「美術文化特殊研究」、共通理論科目の中の美術史系科目のほか、共通実技科目である「芸術創作応用」を選択することにより、素材の研究や表現技法の研究など美術大学ならではの科目を履修することができ、それによって芸術家のより具体的な創造の源に近づき、多角的な美術史研究が可能になるでしょう。

また、研究関連科目として文化財の保存修復の諸問題を扱う「保存修復論」、美術や文化財の科学的調査・分析法を扱う「鑑定分析論」など、美術史をいわば理論と応用の双方から学ぶことができます。

このように本研究領域は、現代社会の多様な要請に応えるべく幅広い教育環境を提供し、将来の様々な活動への展開が可能な美術史研究の新たな方向を目指しています。

芸術表象研究領域

本研究領域では、さまざまな文化的表象について研究するために、芸術理論や批評理論はもちろん、必要に応じて領域を横断し、関連分野を総合的に深めることによって、芸術を基軸とした新たな知の在り方、表現の在り方を探っていきます。

芸術をはじめ文化的表象は、人間が想起したことを、何らかのかたちで世界に提示する行為です。そのため、その理解、分析、研究には、社会という広範な領域に曇りない視線を送ることが求められることになります。また、他でもない自身もひとりの人間として、種々の実践を行ったり、経験してみようとする行動力や実験精神も重要になります。そのため本研究領域のカリキュラムは、理論と実践の両面を意識したものになっています。現代の芸術表現に隣接し、深い関連をもつ表現ジャンル(思想、文学、映像、建築、デザイン、ポップカルチャーなど)や社会活動(アクティヴィズム、地域創造、共同体理論、実践的態度など)に対するまなざしはもちろん、リサーチやキュレーション、ワークショップ、ディスカッション、アーカイブ構築など、関連するプロジェクトの実践についても積極的に取り組んでいきます。

以上のような方針のもと、専門的な知識はもちろん、ときに学際的な領域を横断できる柔軟な発想で、実際にそれを実践することのできる芸術理論の研究者、あるいは芸術理論に基盤づけられた表現者を輩出することを目指します。

美術教育研究領域

本研究領域では、実技制作と理論研究の両面から、美術の教育的意義や美的な人間形成、あるいはさまざまな美術教育の方法論について研究します。そのためのカリキュラムは、美術教育に関する科目を始めとして、実技制作に関する科目、美術理論に関する科目から構成されます。

まず、実技制作は、共通実技科目である「芸術創作応用」を選択することにより、大学の段階で自分が専攻した分野以外のさまざまな分野の実技制作を行います。たとえば、大学で絵画を専攻したとしたら、大学院では絵画以外の彫刻、デザイン、工芸など、専門的な技術を幅広く習得し、それによって広い視野で美術を見つめる能力、表現する能力を身につけます。また美術理論では、共通理論科目からさまざまな美術史、美術理論・造形理論を学習する機会が準備されています。

そして、本研究領域の中核である美術教育に関する科目では、表現することの根源にある思想や芸術教育論、人間形成における美術の本質的意義について学びます。これからの美術教育の在り方を考察し、学校教育で必要な絵画・彫刻・デザイン・工芸・美術鑑賞の指導法を研究することにより、美術教育者としての力量形成を目指します。

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