「迷ったら面白そうな方を選ぶ」
これは中学から女子美の付属で過ごし、日常と芸術が当たり前にまざりあう日々の中で見つけた、わたしの大切な指針の一つです。
予測不能な世の中。動きたくなくても勝手に変わってしまったり、また決心して動いてもやがて想像のつかないところへ押し流されてしまったり。アーティストという孤独な作業のなかで、どちらが前かもわからない闇に足がすくんでしまいそうになることもありますが、女子美での自由でエネルギーに満ちた毎日は創造の力の原点としてわたしを支え、そして今も変わらず励ましあえる友人たちに勇気をもらいながら前に進むことができています。
現在私は木版画の技法を使って近年のモチーフである「LIMBO―辺獄―」の世界を版画や立体作品で表現しています。
得たり失ったりの繰り返しで失意に満ちた毎日と、そこに立ち現れる希望のカタチ。
きわめて個人的な心のありようの積み重ねが、やがて宇宙へとつながる言葉を持ちうるのだという思いを胸に日々制作をしています。
付属生当時は版画に進むなど思いもよりませんでした。何が自分の胸に刺さり人生を変えていくかなど出会ってみないとわかりませんよね。
皆さんはこれから様々な表現に出会いそれぞれの道へ羽ばたいていくことと思いますが是非自分を枠にはめず、好奇心と集中力を持って多感な付属時代を力いっぱい遊んで学んで生ききってください。そうして築きあげていく本当の自分。迷ってもいつでもそこへ立ち戻れること。その強さはどんな世界で活躍するにしても、土壇場のところで自分を守ってくれることでしょう。
女子美での日々がこれからの皆さんの辺獄の道を照らす道しるべとなりますように。
斉藤 里香 SAITO Rika(芸術家)