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家族の影響もあって惹かれた
ヒーリング表現領域。

岩手県にある普通科の中高一貫校に通っていた須田さん。高校1年生の頃から美大を目指していたものの、地元には美術大学やそのための予備校はほとんどありませんでした。
「高校2年生の夏休みに、同じく美大志望の友人と『オープンキャンパス・ツアー』をすることにしたんです(笑)。夜行バスで東京や京都の美大を周って。そのときに、女子美にも行きました。すごく自由そうなところが魅力的で興味を持ったんです」。
そうして女子美について調べているうちに、ヒーリング表現領域のことを知ったのだそう。
「私の母は看護師で、当時は姉も看護師の勉強をしていました。美大で、しかも家族に関係のある分野のことを学べたら楽しいんじゃないかと思って、ヒーリング表現領域を受験しようと決めました」。
入試のための勉強を本格的に始めたのは高校3年生のとき。高校の美術の先生にデッサンを見てもらうだけでなく、夏休みには美大志望の友人たちと仙台にある美術予備校へ。
「毎朝5時に起きて、みんなでバスに乗って通いました。頑張りました(笑)。予備校ではAO入試のためのポートフォリオ作りもしました」。

患者さんの役に立つものを
突き詰めて考える。

その甲斐あって、無事AO入試に合格した須田さん。ポートフォリオを作るにあたっては、病院にどういうものがあったら患者さんを癒せるかを、看護師であるお母さんに相談したそうです。
「母からアイディアをもらって、点滴の注射のシールを可愛くデザインしました。それから病院の壁紙のデザイン案も一緒にまとめて提出して……。実は今まさに授業のなかで、心身療育医療センターの壁を装飾するプロジェクトを行っています。カリキュラムのなかで実際に患者さんの役に立つものを手がけられるというのは、ヒーリング表現領域のすごく良いところだと思います」。

医療機関の壁を装飾するプロジェクトでは、グループ内でアイデアを出し合う。

3年の後期の授業では、素敵な出会いも。
「絵本を作る授業があるのですが、特別講師として絵本作家のいせひでこ先生(※『ルリユールおじさん』『大きな木のような人』などの代表作で知られる)がいらっしゃったんです。優しいだけでなく鋭い視点を持っていらして、これが作家なんだと感動しました。いせ先生とは授業の一環で、長野県へスケッチの研修旅行へも行きました。食もご一緒して、直接普段聞けないようなお話を伺えて、すごく楽しかったんです」。

人の気持ちに寄り添って、
作ったもので楽しんでもらいたい。

須田さんは女子美の学生は「オープンで優しい人が多い」と言います。「思っていることは全部言うけど、否定はしないし、相手を褒める人が多い気がします。特にヒーリング表現領域の人はみんな優しいと思う(笑)。1年生のときからグループワークが多いので、周りとの調和を大事にしているのかもしれません」。

授業内で制作した木製のおもちゃ

卒業まであと1年と少し。進路についてもそろそろ考え始めているのだそうです。
「就職は医療系ではなく(笑)、今はゲームが好きなのでゲーム会社に行きたいなと考えています。ヒーリング表現領域では空間やキャラクター、ぬいぐるみについても学ぶ機会が多いので、そういうところを活かせたらと思っています」。

高校の頃、友達の誕生日にイラストを描く方が、自分のために絵を描いているときよりも楽しかったと語る須田さん。「ヒーリング表現領域は、自分のためではなく、人のために何かを作りたいという人にはオススメです」と教えてくれました。誰かの気持ちに寄り添い、楽しませたいという須田さんの一貫したマインドは、社会に出た後も活かされていくのでしょう。

※2019年12月に取材したものです。