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100日間に亘り日本の工芸を体感できる21世紀鷹峯フォーラムのスタートにあたり、2016年10月22日土曜日、六本木ヒルズにおいて開幕セレモニーが開催されました。本学の美術館長の馬場章先生が会長を務める第2回鷹峯フォーラムは、昨年の京都からのバトンを受け、東京の地で開催されました。工芸の未来を切り開くために、さまざまな分野の方々が、工芸の伝統と用の美、そして未来について考えます。
前年、京都で開催された鷹峯フォーラムは、江戸時代に活躍した本阿弥光悦が、工芸の職人がものづくりにいそしむ
理想郷を京都の鷹峯の地につくろうというビジョンを持っていたことに敬意を表し命名されました。
光悦の理念を21世紀の工芸のあり方につなげるために、何ができるかを模索します。
鷹峯フォーラムの発起人であり副会長の林田英樹氏は、本学の学生に対する期待を寄せてくださいました。
「工芸の分野は織や染色、刺繍など女性の才能が多くの分野で発揮されてきました。女子美術大学は100年以上前から
多くの人材を育成し輩出しているので、今の学生さんたちの感性が工芸をどんな風に捉え、新しい発想で創作されるのか楽しみです」

未来の工芸のために考えなければならないこと

鷹峯フォーラムの課題は3つあります。
第一に、「よき使い手」と「良き鑑賞者」を生み出すことです。どんなアートの分野にも言えることですが、我々の創作活動が継続するためには、自分たちが作り手であることだけを目指し、学ぶのではなく、使う人、鑑賞する人であるということも大切なことです。
第二は、よいものを作り続けるための支援です。これは国の助成金や文化の保護、大学での研究なども必要ですが、何よりも工芸がもっと売れるようになることが求められています。
第三は、国内外の現代の生活の中に工芸が行き渡るために、何ができるかを検討します。
現代に生きる人々とともにある工芸のあり方について、女子美の学生の感性がもとめられているのです。

「えどがわ伝統工芸×女子美術大学」(2017/1/13~15)

次世代の伝統工芸への可能性を模索するコラボレーション

江戸川区には、多くの伝統工芸の技を伝承している職人の方々がいます。江戸扇子、江戸風鈴、陶芸、江戸硝子、つりしのぶ、漆芸、組子建具、染色、型染など、これらは、人々の暮らしの中で育まれた粋で遊び心のある工芸です。
女子美術大学では14年前から、毎年学生が彼らの元で学ぶ機会をいただき、職人の技と女子美のデザインとの交流を通じ、新しい工芸の可能性を模索してきました。
今回の鷹峯プロジェクトのイベントとして、渋谷ヒカリエにおいて、えどがわ伝統工芸産学公プロジェクトの成果を展示することができました。学生たちのみずみずしい感性が発揮された新しい和の世界が、渋谷という感度の高い場所で、普段伝統工芸に触れる機会のないお客様に発信できました。

また1月14日と15日には、えどがわ伝統工芸プロジェクトのメンバーである女子美生がスタッフとなるワークショップが開催されました。初日は組子コースターづくり、2日目の風鈴づくりには、子どもたちが参加し、スタッフのていねいなサポートで、型にとらわれない生き生きと楽しい風鈴ができあがりました。

「想像×創造 -116年の伝統と躍動する工芸女子-」(2017/1/20~22、1/24~26)

テーマは「想像×創造」。

日本の工芸の伝統を116年支えた女子美工芸女子。
次の100年を担う彼女たちの成果です。
女子美術大学の工芸専攻の学生にとって、青山のスパイラルガーデンで行われる卒業・修了制作展は、大学生活の集大成ともいうべきビッグ・イベントです。
工芸の作品が、最先端のアートやデザインの発信基地で発表される貴重な機会です。
4月から準備が進められ、染・織・刺繍・陶・ガラスの各コースからの代表者が力を合わせ、晴れの日を迎えました。
今年は女子美術大学が実行委員会を務めた21世紀鷹峯フォーラㇺの最後を飾る舞台としての思いも込め、華やかな空間が生み出されました。
期間中、学生たちの力作の展示に囲まれたスパイラルカフェでは、女子美のテキスタイルの技術を結集したテーブルクロスでおもてなしという趣向が凝らされました。
染・織・刺繍コースの前半の展示は、布と糸の可能性を探求した世界。学生たちは、日本の伝統工芸のみならず、世界のテキスタイルについての歴史や文化を研究して、自らの想像の世界を広げ作品を創造しています。
時間をかけた精微な手作業から生み出された作品や、ダイナミックな発想によるアーティスティックな作品は、染・織・刺繍の未来を感じさせてくれました。
後半の展示は、陶とガラスコース。この分野の魅力は、自分の想像した世界を「素材」と「火」という自然の力を借りてかたちとすることだといいます。自分のイメージにたどり着くおもしろさと、思いもかけない偶然性の美。
丹念な資料作成と準備の段階と一気呵成に仕上げる度胸。相反する質の創作活動を通じて、多くの魅力的なアーティストたちが育ったようです。
何百年、何千年も前から人類に受け継がれてきた工芸の技に対し、これからの女性作家たちは、どんな可能性を持っているのでしょうか。
その一端として女子美の卒業・修了制作展には、さまざまな魅力がつまっていました。

「円卓会議 メインシンポジウム『100年後の工芸のために』」(2017/1/29)

東京、そして日本で工芸に関わるさまざまな方たちが東京ミッドタウン Hall Aに集まり、「100年後の工芸のために」意見を交換しました。最後に、21世紀鷹峯フォーラムで開催された工芸にまつわるアクティビティの成果とも合わせ、「東京提言」を発表し、「100年後の工芸のために」、私たちに何ができるのか、そして何をすべきかを共有し、それぞれの立場でこれからの工芸への関わり方に役立てていただくものです。