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アーティストを支えるかたちで
美術と関わってみたい。

「小学校の頃から絵を描くことが好きだったのですが、私はそこまで上手じゃなくて(笑)」。山下さんに美大に進んだきっかけを尋ねると、そんな意外な一言が返ってきました。
「それでもアートが大好きだったので、進路は美術関連の大学に進みたいと思っていました。さらに、舞台女優を目指す友人の影響で、もともと好きだった演劇にさらに深い興味を持つようになって。彼女みたいなアーティストを支えるようなかたちで、舞台に関わってみたいと思うようになったんです」。
そんなときに彼女が手に取ったのが、アートプロデュース表現領域(以下AP)のパンフレット。「『美術が好き。音楽が好き。演劇が好き。映画が好き。ご飯も好き。』と書いてあって興味を持ちました。友達に『これ全部祐希奈に当てはまるね』と言われて、確かに……と(笑)。さらに調べたら、まさに自分のやりたいと思っていたことが学べるとわかり、これだ!と思ったんです。私が思うに、APはどちらかと言うと、アーティストをマネジメントしたりキュレーションしたりすることを学ぶところ。そのために、舞台芸術や音楽、空間演出までいろいろ学んでいます」。

アートプロデュース表現領域のパンフレット表紙
アートプロデュース表現領域のパンフレット中面

ワークショップの手伝いを通して、
逆に教わったこと。

演劇も映画もアートも幅広く学べることが特徴のAPは、山下さんいわく「いいとこ取り」なのだそう。1学年が20人という少人数なのも特徴です。
「人数が少ないので、領域の子とはすごく仲良し。ジャズ・ピアニストの先生の授業では、先生のピアノに合わせて歌い出しちゃって、お祭り状態になったことも(笑)。グループワークをしたときに物怖じせずに意見が言えるし、先生にしっかり質問できるのもすごくいいなと思います」。
特に印象に残っている授業は、南島隆先生の講義だそう。「最初の課題は、“公共の場所に置く卓球台を自由な形で作る”というものでした。それがすごく楽しくて、その後、南島先生が主催するワークショップのお手伝いをするようになりました」。

課題で作った卓球台
課題で作った卓球台
課題で作った卓球台

山下さんが参加したワークショップは、大学内で行う小学生向けのものから、福島県相馬市や千葉県佐倉市などの地方自治体との提携で行ったものまで、その幅広さに驚きます。
「私はひとりっ子で、今まで小さい子と触れ合ったことがなかったので、小学生の子たちにうまく作り方を教えてあげられるか心配だったんですけど、すごく楽しかったです。小学生の子たちは自由な発想で作品を作るので面白かったですね」。
佐倉市のワークショップでは、小学生の子たちと「光る土偶仮面」を制作。「土偶の仮面を作るのですが、目の部分がピカッと光るんです(笑)。ワークショップによっては参加される方の年齢層もさまざまなので、自分の話し方や説明の仕方にも気をつけるようになりましたね」。

ワークショップの様子「光る土偶仮面」
ワークショップの様子
ワークショップの様子

アートの現場を、
自分の目で確かめたい。

そうしたワークショップの経験は、山下さんの考え方にもポジティブな変化をもたらしたといいます。
「もともとは演劇方面でやっていきたいという気持ちが強かったのですが、演劇やアートを『いろんな人に知ってもらう』ことも面白いなと思うようになりました。ワークショップ以外にも、キュレーターの先生や、アートプロジェクトを手がける先生のお話にもすごく刺激を受けました。今はどちらかというと、その方面に進もうかなと思っています。と言っても、まだ探り探りですが……(笑)」。
同じ領域の友人とは、最近のアートシーンの話や、観に行った展覧会の話でディスカッションになることもあるのだそう。
「女子美に入ってから、よりアートが好きになりました。だからこそ、美術館や芸術祭には実際に足を運んで、自分の目でどういうことが起きているのかを確かめたいと思っています」。そう語る山下さんの瞳は静かな野心に燃えていました。

※2019年12月に取材したものです。