松尾さんに出会ったきっかけは?
卒業制作をやっている時期に、池袋コミュニティ・カレッジで、松尾さんが主催するワークショップに参加したのが、松尾さんにお会いした最初ですね。当時、大学の中だけにいるとプロの仕事がどんなものかわからなくて、外に出ていろいろなことをやってみたかったのです。ものをつくる現場の人を見たかった。自分の中で絵を描くことに違和感を感じていました。ワークショップでいろんなことをやってみて、やっぱり絵を描くのが好きだということがわかりました。しばらく経ってから、松尾さんに作品ファイルを見ていただく機会を得ました。
その後松尾さんに絵の才能を買われて、さらに舞台美術や映画の絵コンテなども任されていますね。
私は、美術やものをつくることは、根本が同じなんだから真摯に向きあえば何をやってもいいのかな、と思っています。私自身、売り込みとかはできなくて、つくることでしか答えが出せないから、ちゃんとつくります!って言って、続けているだけなんです。
女子美に通ったことは今のご自身に影響していると感じますか?
高校時代から女子美にいてよかったのは、ああしろ、こうしろと言われない「放牧」的なところです。基本的に下品になることは駄目でしたけど、本当に自由にやらせてくれました。高校生の時に、女子美出身の先生に絵を習いにいったのですが、学校と同じように何もおっしゃらなかったですね。ただ、描かないでいると「止まっていても何も始まらないわよ」と喝を入れられました。
高野さんの好きな作家は?
好きな絵描きは若冲です。あとファッションデザイナーのジャン・ポール・ゴルチエも好きです。小説は、坂口安吾が好きでした。世界観を求めているというわけではなく、ただ好きなんですね。
決まった制作スタイルなどはあるのでしょうか?
絵を描く時は、最初にこういう風に描きたいと決めないで、もやっとした状態で描き始めます。描いていくうちに、「あ、これが出た」というスタイルなのです。ですから、油彩画とかデザインは自分に合ってないな、と思います。私にとってエスキースは意味がないのです。ぶっつけ本番が一番いい。好きな匂いの場所にいると、時間がかかるのですが、必ず自分の思い描いていたところに辿り着くというような感じなのです。でこぼこ道を遠回りしているほうが、途中でおもしろいものにいっぱい出会えると思います。遠回りでも、ただでは戻ってこないというか、常に発見があるのです。